海を眺めていると、当たり前のようにそこにある「水」。でも、この海は一体いつ、どうやって生まれたのでしょうか?
実は、海がどうやってできたのかは、現代の科学者たちの間でもまだ完全には解明されていない「宇宙規模の謎」なんです。
この記事では、地球誕生から海が生まれるまでの壮大なストーリーを、最新の研究もまじえてわかりやすく解説します!
堀江水は「彗星から来た説」と「地球が自分で作った説」、実はまだ決着していないんです。地球って謎だらけで面白い!
地球誕生直後は「灼熱の星」だった


今からおよそ46億年前、地球が生まれたばかりの頃、その姿は今とはまったく違うものでした。
宇宙のちりやガスが集まって地球ができた直後、表面は摂氏1,000度を超えるようなドロドロのマグマに覆われていたと考えられています。いわゆる「マグマオーシャン」と呼ばれる状態です。
このとき、水は液体として存在できませんでした。もし水があったとしても、あまりの高温で瞬時に蒸発してしまうからです。
つまり、海が生まれるためには、まず地球が「冷える」必要があったんですね。



アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、地球が水の沸点である摂氏100度を下回るまで冷えたことで、およそ38億年前に原始の海が誕生したと考えられています。
海の水はどこから来たのか?2つの有力な説
地球がある程度冷えてきたとして、次の疑問は「そもそも、あれだけ大量の水はどこからやってきたのか」ということです。
これには、大きく分けて2つの説があります。
説①:地球内部から水蒸気が出てきた「脱ガス」説


1つ目は、水はもともと地球の材料そのものに含まれていたという説です。
地球を作った岩石や鉱物の中には、もともとわずかに水分(正確には水素や酸素の成分)が含まれており、マグマオーシャンが冷えていく過程で、これらの成分が火山活動などによって水蒸気やガスとして地表に噴き出し、大気中にたまっていきました。
その後、地球がさらに冷えて気温が下がると、大気中の水蒸気が雨となって地表に降り注ぎました。この雨が何百万年という途方もない時間降り続き、たまった水が海になった、というのがこの説の考え方です。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、地球の気温が水の沸点である摂氏100度を下回ったおよそ38億年前に、この水蒸気が雨となって現在の海の基となるくぼ地を満たしたとされています。
※出典:NOAA National Ocean Service「Why do we have an ocean?」
説② 宇宙から運ばれてきた「彗星・小惑星」説


2つ目は、水は地球の外からやってきたという説です。
彗星や小惑星には、氷の形で大量の水が含まれているものがあります。地球が誕生してからしばらくの間、太陽系にはこうした天体が数多く存在し、地球にも次々と衝突していたと考えられています。
この衝突のたびに水がもたらされ、少しずつ蓄積して海になった、というのがこの説の考え方です。
彗星の水と海水は「兄弟」だった?
彗星が地球に水を運んだかどうかを確かめる手がかりは、水に含まれる「重水素」という、通常よりわずかに重いタイプの水素の比率にあります。この比率は天体ごとに異なり、いわば水の「指紋」のようなものです。
これまで多くの彗星ではこの比率が地球の海水と一致していませんでしたが、2018年にNASAがワータネン彗星(46P)を詳しく観測したところ、この比率が地球の海水とぴったり一致することが分かりました。
これまで考えられていたよりも多くの彗星が、地球に水を運んでいた可能性があるのです。
「はやぶさ2」が見つけた、小惑星の中を流れる水
日本の探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウのサンプルには、太陽系誕生時の水や有機物が今も残されていると、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は説明しています。
さらに2025年、東京大学の研究チームがこのサンプルを分析したところ、小惑星誕生から10億年以上も後になって、内部を液体の水が流れていた痕跡が見つかりました。「水の活動は太陽系のごく初期にしか起きていなかった」というこれまでの定説を覆す発見です。
太陽風が「岩」から水を作り出す?
実は水とは無縁に見える岩石質の小惑星でも、水は生まれるかもしれません。
2010年に初代「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワのサンプルを、英グラスゴー大学の国際チームが分析したところ、太陽から吹き出す水素イオン(太陽風)が岩石表面にぶつかることで、水が生成されていたことが分かりました。
この現象は「宇宙風化」と呼ばれ、JAXA宇宙科学研究所も実験で実証しています。
つまり、地球の海の水は、小惑星がまるごと運んできた分だけでなく、こうして「作られた」水も混ざっているのかもしれません。
※出典:
NASA JPL「Comet Provides New Clues to Origins of Earth’s Oceans」
JAXA宇宙科学研究所「Hayabusa2」
ScienceDaily「Asteroid Ryugu’s hidden waters could explain how Earth got its oceans」
Nature Astronomy「Solar wind contributions to Earth’s oceans」
最新研究でわかった第3の仮説!「地球は自分で水を作った」説
長年、水の起源については彗星説と小惑星説の間で評価が揺れ動いてきましたが、近年、これらとはまったく違う第3の可能性が注目されています。
2026年6月に科学誌「Quanta Magazine」で紹介された最新の研究では、地球は外部から水を運んでもらう必要すらなく、「自分自身で」水を作り出した可能性があるという考え方が提示されています。



地球を作った材料そのものに、想像以上に多くの水素が含まれていた可能性がある、という考え方です。
これを後押しする研究もあります。アメリカのウッズホール海洋研究所(WHOI)の研究チームは、小惑星ベスタ由来の隕石「エウクライト」に含まれる水素を詳しく分析しました。その結果、エウクライトの水素の性質が、地球の水とよく似ていることが分かったのです。
小惑星ベスタは太陽系が誕生してからわずか1,400万年ほどで冷え固まったと考えられており、その前にはすでに水を持っていたことになります。この研究は2014年に科学誌「Science」で発表され、地球の水は惑星が形作られるのとほぼ同時に、ごく初期の段階からすでに存在していた可能性を示しています。
つまり「彗星が運んできた」のか「地球が最初から持っていた」のか、あるいは「その両方が組み合わさっている」のか、実は今もはっきりとした結論は出ていないんです。
出典:
Woods Hole海洋研究所「How Did Earth Get Its Ocean?」
Quanta Magazine「Where Did Earth Get Its Oceans? Maybe It Made Them Itself.」
海は「生命のゆりかご」でもあった


ここでちょっと視点を変えて、海が地球の歴史にもたらした、もうひとつの役割にも触れておきましょう。
実は、海が誕生したことは、地球に生命が生まれる土台にもなったと考えられています。NASAによると、地球そのものはおよそ46億年前に誕生しましたが、生命が存在していた証拠は、少なくとも40億年前まで遡れるとされています。地球の歴史のかなり早い段階から、すでに生命が存在していた可能性があるということです。
生命が具体的にどこで生まれたのか、科学者たちは海岸の潮だまりや、波しぶきが飛び散ってできる小さな水滴、そして海底に開いた「熱水噴出孔」などを有力な候補として考えています。特に、初期の生命の遺伝子を調べた研究からは、生命はもともと高温の環境に適応していた可能性が高いことが分かっており、熱水噴出孔のような場所が生命誕生の鍵を握っていたのではないかと注目されています。
また、今の地球の大気に欠かせない酸素も、もともとは海の中で誕生した生き物たちの働きによって少しずつ増えていったと考えられています。海は単に「水がたまった場所」ではなく、生命が生まれ、進化し、今の地球環境を作り上げていく出発点でもあったわけです。
出典:NASA Science「How did life first emerge on Earth?」
海があるのは地球だけじゃない?


さらに視点を宇宙に広げてみましょう。
実は、海があるのは地球だけではないかもしれません。木星の衛星「エウロパ」は、分厚い氷の下に、地球の海に似た巨大な液体の海が広がっていると考えられています。NASAによると、こうした「オーシャン・ワールド(海を持つ天体)」は、エウロパだけでなく、土星の衛星エンケラドスやタイタンにも存在する可能性があるとされています。
NASAはエウロパに向けた探査機「エウロパ・クリッパー」を打ち上げ、生命に必要な条件がそろっているかを調べようとしています。
ちなみに、私たちに身近な月にも、実は水があります。ただし、月にあるのはエウロパのような巨大な海ではなく、太陽の光が一切当たらない極地のクレーターの底に眠る、氷の形の水です。同じ「水がある天体」でも、海として存在するか、氷として眠っているだけかで、天体ごとに大きな違いがあるんですね。



もしかしたら、私たちが今見ている「海」は、宇宙では意外とありふれた存在なのかもしれませんね。
出典:
NASA Science「Ocean Worlds: Water in the Solar System and Beyond」
NASA Science「Moon Water and Ices」
まとめ:海の誕生は、まだ解明中の壮大なミステリー


海がどうやってできたのか、実はそのすべてがまだ解明されているわけではありません。
灼熱のマグマオーシャンに覆われていた地球が冷え、地球内部からの水蒸気が雨となって降り注いだのかもしれませんし、彗星や小惑星が宇宙から水を運んできたのかもしれません。あるいは、地球を作った材料そのものに、最初から水のもとになる水素が含まれていたのかもしれません。
さらに、水を得た海はやがて生命を育み、私たちの知る地球環境を作り上げていきました。そして今、同じような「海」が地球以外の天体にも存在するかもしれないことまで分かってきています。
こうした謎が今もなお、世界中の研究者によって少しずつ解き明かされ続けているというのは、なんだかロマンがありますよね。



次に海を見るときは、その水が46億年前の地球誕生から続く、途方もない歴史の結晶であることにも、少し思いを馳せてみてください!


【参考文献】
- NOAA National Ocean Service「Why do we have an ocean?」
- NASA JPL「Comet Provides New Clues to Origins of Earth’s Oceans」
- JAXA宇宙科学研究所「Hayabusa2」
- ScienceDaily「Asteroid Ryugu’s hidden waters could explain how Earth got its oceans」
- Nature Astronomy「Solar wind contributions to Earth’s oceans」
- Woods Hole海洋研究所「How Did Earth Get Its Ocean?」
- Quanta Magazine「Where Did Earth Get Its Oceans? Maybe It Made Them Itself.」
- NASA Science「How did life first emerge on Earth?」
- NASA Science「Ocean Worlds: Water in the Solar System and Beyond」
- NASA Science「Moon Water and Ices」
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