「夏の魚って、なんであんなにうまいんだろう?」
そう聞かれると、漁師としては「そりゃもう、理由がありますよ」と言いたくなります。
夏の海には、魚が育つ条件がそろっています。
エサが豊富で、水温もちょうどよく、魚たちは脂を蓄えて元気いっぱい。
なかには、産卵前で栄養をたっぷりため込んでいる魚も。
スーパーに並ぶ魚たちの中には、今だけ脂がのって身がふっくらとした『旬』の魚がたくさんあります。
この記事では、現役漁師の視点から、夏が旬の魚がなぜおいしいのかをわかりやすく解説しつつ、実際にこの時期おすすめしたい魚たちを「特徴」「おいしい食べ方」とともに紹介していきます。
難しい知識なんていりません。「今が旬」をちょっと意識するだけで、食卓がぐっと豊かになりますよ。
魚にも『旬』がある!夏に一番おいしい時期をむかえる理由
実は、魚も野菜や果物と同じように、季節によって一番おいしくなるタイミング=「旬」があるんです。
旬の魚は、身が引き締まり、脂ものって絶品。しかも、値段はお手ごろで、栄養価もグンとアップ!
「いつも同じ魚を買ってしまう……。」という方こそ、ぜひ「夏が旬の魚」に注目してみてください。
この時期だけの美味しさ、きっと新しい発見がありますよ。
夏の海はエサが豊富で魚の身がプリプリに育つ
夏の海には、プランクトンや小魚などのエサが豊富にあります。
魚たちはこのエサをたっぷり食べて、ぐんぐん成長し、身がギュッと締まってプリプリに!
だからこそ、夏に旬を迎える魚は脂ののりもよくて美味しいんです。
まさに自然のサイクルが作り出す、「夏のごちそう」ですね。
夏は産卵前の魚が多く、栄養をたっぷりため込んでいる
魚は産卵前になると、体に栄養をしっかり蓄えます。
夏はちょうどそのタイミングにあたる種類も多く、身が引き締まり、脂ものって味が濃くなるのが特徴です。
つまり、「今が一番おいしい!」という状態。まさに旬といえるベストなタイミングなのです。
「夏は魚が傷みやすい」は昔の話?今は冷凍やパック技術が進化
「夏は魚が傷みやすいからちょっと不安」と思っている方も多いかもしれません。
でも最近は、冷蔵・冷凍・真空パックなど保存技術が格段に進化しています。
スーパーでも「加工日」や「解凍表示」をチェックすることで、新鮮な魚を安心して選べるようになりました。

発送の技術も進化していて、鮮魚でも新鮮なままお店まで運べるようになってきています。
今がまさに食べどき!夏に旬を迎える代表的な魚たち
「夏が旬の魚は種類が少ない」と思っていませんか?
実は夏こそ、美味しい魚が豊富に出回る季節。
ここでは、夏が旬の代表的な魚を5種類ピックアップ。今が食べどきの味、ぜひチェックしてください!
アジ|焼いてよし、刺身でよし!万能な夏の定番魚
アジは一年中出回っていますが、特に夏は旬を迎えて脂がのり、刺身でも焼き魚でも格別に美味しくなります。
小ぶりなサイズはフライや南蛮漬けに。新鮮なものが手に入れば、手軽に「アジのたたき」にするのもおすすめです。
クセが少ないので家族みんなで楽しめる、頼れる魚です。
スズキ|クセがなくて上品、和洋どちらもおまかせ
スズキは夏が旬の白身魚で、クセがなく上品な味わいが特徴です。
塩焼きや蒸し物といった和風の料理はもちろん、ムニエルやポワレなど洋風にも合う万能な魚。
見た目にもきれいで食卓が華やかになるので、ちょっとしたおもてなし料理にもおすすめです。
切り身で売っていることが多く、扱いやすいのもありがたいですね。
イサキ|塩焼きにすると香ばしくてごはんが進む!
イサキは脂がほどよくのって、夏の焼き魚として定番の一つ。
とくにシンプルな塩焼きは皮目がパリッとして身はふっくらで、ごはんとの相性も抜群です。
タイに似た淡白で上品な味わいなので、煮付けや酒蒸しでも美味しくいただけます。
魚があまり得意じゃない人にも食べやすい、優しい味わいです。



初夏のイサキは格別!脂がのっていて、刺身も最高ですよ。
カンパチ|刺身で食べたい!脂のり抜群の高級感
カンパチは、夏から初秋にかけてが旬。
ブリ属の魚で、ほどよい脂としっかりした食感が魅力です。
スーパーでも刺身用としてパックで売られていることが多く、手軽に食卓に取り入れられます。
お寿司屋さんでも人気のネタで、ちょっと贅沢したい日の夕飯にもおすすめの一品です。
キス|天ぷらにぴったり!淡白でふんわり上品な味
キスは白身でクセがなく、ふんわりとしたやわらかい身が特徴。
定番の天ぷらはもちろん、フライにしても上品な味わいで人気です。
小ぶりなサイズが多く、下処理も簡単。冷めても美味しいので、お弁当のおかずにもぴったり。
食卓に季節感を添える、夏ならではの魚ですよ。
スーパーで気軽に買える夏の魚|主婦目線で選びやすさ重視!
実は、普段スーパーでよく見かける魚の中にも、夏が旬のものはたくさんあるんです。
しかも、スーパーで買えるものは、リーズナブルで調理も簡単!
忙しい毎日でも手軽に買えて、食卓に取り入れやすい「夏が旬の魚」を5種類紹介します。
献立に迷ったときのヒントにどうぞ!
イワシ|栄養たっぷりで家計にやさしい優秀食材
夏に旬を迎えるイワシは、カルシウムやDHAも豊富で、子どもにも食べさせたい一品。
新鮮なものは刺身でも楽しめますが、手開きして生姜煮や梅煮にすれば骨まで柔らかく食べられて栄養満点。
カタクチイワシのような小ぶりなサイズなら、丸ごとフライにしてもおいしいです。
安いときにまとめ買いして、冷凍しておくのもおすすめですよ。



「入梅イワシ」と呼ばれる、梅雨時期(6〜7月)に水揚げされる真イワシは、一年の中で一番脂がのっています。
タチウオ|ふっくら柔らか、焼くだけでごちそうに
タチウオは夏以外も手に入る魚ですが、特に夏は身がやわらかくてふっくら。
クセがなく上品な味わいで、子どもからお年寄りまで食べやすい魚です。
スーパーでは切り身で売られていることが多く、塩をふってグリルで焼くだけで立派な主菜に。
薄くて火の通りも早いので、忙しい日の夕飯づくりにも助かります。



細身のタチウオなら、3枚におろして天ぷらがおすすめです。お手頃価格で、お財布にも優しいですよ。
キハダマグロ|あっさりヘルシー!夏に嬉しいさっぱり赤身魚
キハダマグロは、その名の通り黄色っぽい背びれが特徴のマグロの一種です。
海外からの輸入物も多く流通していますが、高知から九州で水揚げされるキハダマグロは、初夏〜夏にかけてが旬。
脂っこさが少なく、あっさりとした赤身が特徴で、夏の暑い日でも食べやすいのがおすすめのポイントです。
刺身用ブロックやパック詰めでスーパーに並ぶことも多く、価格も本マグロに比べて手頃。
わさび醤油はもちろん、おろしポン酢やニンニク醤油で食べるのもありですよ。
サザエ|コリコリ食感がクセになる!夏の磯の香りを楽しもう
サザエは夏が旬の貝の代表格。
コリコリとした独特の食感と磯の香りが特徴で、シンプルに壺焼きにすれば、おうちでも夏の浜辺気分が味わえます。
刺身でも楽しめるほか、さっと茹でて酢の物や和え物にも◎。
最近は下処理済みのボイルサザエやカット済みの冷凍品も出回っているので、手間をかけずに楽しめるのもありがたいですね。
カマス|干物でもおなじみ!香ばしくて食べやすい
カマスは干物のイメージが強いかもしれませんが、夏は鮮魚としてもよく出回ります。
塩焼きにすると皮はパリッと香ばしく、身はふっくら。
小ぶりなので魚焼きグリルにも収まりやすく、手間もかかりません。
シンプルに焼くだけで魚本来の旨味が楽しめるので、魚初心者にもおすすめの一品です。



夏は「アカカマス」、冬は「アオカマス」が流通します。
地域限定の夏魚も見逃せない!この時期だけのお楽しみ
夏に旬を迎える魚は、全国どこでも手に入るものばかりではありません。
地域ごとの海や気候に育まれた「地元ならでは」の魚たちも、夏の食卓を楽しませてくれます。
旅行先や産直コーナーで見かけたら、ぜひ試してほしい味ばかり。
知っておくとちょっと得した気分になれる、夏の「ご当地魚」をご紹介します!
アナゴ|関西では夏のごちそう!ふっくら甘だれがたまらない
関西では「梅雨アナゴ」と呼ばれるほど、夏に脂がのって美味しくなるアナゴ。
うなぎよりもあっさりしていて、蒸してから焼く「煮アナゴ」が定番です。
スーパーでもタレ付きの蒲焼が売られていることが多く、レンジで温めるだけで立派な一品に。
ごはんにのせれば、夏バテ気味のときでもペロッと食べられます。
キビナゴ|鹿児島の定番魚!小さいけれど味は一人前
キビナゴは鹿児島など九州南部でおなじみの小魚で、夏に旬を迎えます。
銀色の体がきらきら美しく、見た目にも涼しげ。
お刺身はもちろん、唐揚げや天ぷらにすると、カリッと香ばしくて骨ごと食べられる栄養満点のおかずに。
小ぶりなので、子どもにも食べやすく、お弁当にもぴったりです。
トビウオ|飛ぶ魚は刺身が絶品!屋久島では「アゴ」と呼ばれる
屋久島など南の海で水揚げされるトビウオは、初夏から夏が旬。
刺身にすると歯ごたえがありながらもクセがなく、生姜と醤油でさっぱりいただけます。
塩焼きや干物にしても美味しく、魚焼きグリルで手軽に調理できるのもポイント。
「アゴだし」の原料としても有名で、だしパックでも見かける魚です。
シマアジ|上品な脂と弾力が魅力の高級魚
シマアジは回転寿司などでも人気の高級魚で、実は夏が旬。
普通のアジよりも脂がほどよくのっていて、刺身にするとしっとりした口当たりが楽しめます。
お刺身用でスーパーに並ぶこともあるので、ちょっと贅沢したい日にぴったり。
クセがないので、お子さんやお魚が苦手な方でも食べやすいですよ。
アオリイカ|ねっとり甘い、夏に美味しいイカの王様
アオリイカは夏場に旬を迎える、イカの中でも特に人気の種類。
身が厚くて柔らかく、ねっとりとした甘みが特徴です。
新鮮なものは刺身が絶品で、しょうゆだけでも十分な美味しさ。
火を通しても固くなりにくいので、炒め物や天ぷらにしても美味しく、いろいろな料理に使いやすいのもうれしいポイントです。
暑い季節こそ気をつけたい!夏の魚選びで失敗しないポイント
夏は魚の旬が多くてうれしい季節ですが、高温で傷みやすいのも事実。
せっかくの美味しい魚も、選び方を間違えるとがっかり、なんてことにもなりかねません。
そんな失敗を防ぐために、スーパーや魚屋でチェックすべき「夏の魚選び」のコツを紹介します。
魚売り場は朝が勝負!鮮度は時間との戦い
夏場はとにかく魚の鮮度が命。特に午前中、スーパーが開店した直後が狙い目です。
朝に並べられる魚は仕入れたばかりのものが多く、新鮮なものが並んでいます。
午後になるとどうしても鮮度が落ちてくるので、買い物の時間帯を少し意識するだけでも失敗を防げます。
朝のスーパーは空いていて、じっくり選べるのもいいですね。
ツヤと透明感があるかチェック!見た目は一番のヒント
魚を選ぶときは「見た目が9割」といっても過言ではありません。
目が澄んでキラッとしていて、皮にツヤとハリがあるかをチェックしてみてください。
逆に目に血が混じっていたり、身がしぼんでいるように見えたりする魚は要注意。
切り身でも色が濁っていたり、乾燥しているものは避けた方が無難です。
魚はちゃんと冷やされているかチェックしよう
夏は気温が高いため、魚の鮮度を保つには「冷やされていること」がとても大切です。
氷の上に置かれていたり、ショーケースが冷やされていたりしている売り場の魚は、きちんと温度管理されている証拠。
冷えていない魚は鮮度が落ちている可能性もあるので、十分注意しましょう。
「冷えている=おいしさキープ」のサインです。
切り身でも妥協しない!ドリップ(赤い液体)が出ていないか確認
切り身の場合は、パックの中に赤い液体(ドリップ)が出ていないかをチェックしましょう。
ドリップは魚の旨味や栄養分が流れ出たもので、鮮度が落ちているサイン。
表面にツヤがあり、身にハリがあるものが新鮮な証です。
切り身だからといって、鮮度チェックを怠らないのが美味しく食べるコツですよ。
旬を聞いてみるのもアリ!鮮魚スタッフとの会話がヒントになる
「今日はどれが一番おすすめですか?」と鮮魚コーナーのスタッフさんに聞いてみるのも、とても効果的。
プロがすすめる旬の魚や、その日の仕入れ情報を教えてくれることもあります。
ちょっと声をかけるだけで、魚選びがぐっと楽しく、確かなものに。
気になる魚の調理法も聞けるかもしれませんよ。
暑い夏にぴったり!旬の魚をさっぱり美味しく食べる調理法
夏は暑さでキッチンに立つのが面倒なときも。
でも、旬の魚をちょっと工夫してさっぱりと調理すれば、食欲がない日でもスッと食べられます。
ここでは、火をあまり使わずにできるものや、冷たくして美味しい夏ならではの調理法をご紹介。
「手軽」「美味しい」「涼しい」をテーマに、夏の食卓を楽しくしましょう。
刺身・カルパッチョ|キリッと冷やして、夏の食卓に爽快感を
暑い日は、火を使わずに食べられる冷たい料理がうれしいですよね。
アジやイサキなどの旬の魚は、刺身にするだけでさっぱり美味しく食べられます。
オリーブオイルやレモンをかけてカルパッチョ風にアレンジすれば、見た目もおしゃれに。
副菜感覚で取り入れられるので、夕飯のもう一品にもぴったりです。
酢締め・南蛮漬け|食欲がない日でもするっと食べられる
夏の疲れた体には、ちょっと酸っぱい料理がうれしいものです。
アジの南蛮漬けは、揚げた魚を甘酢にじゅわっと漬け込むだけ。
酢締めにして冷蔵庫で冷やしておけば、冷たい副菜として重宝します。
玉ねぎやパプリカなど夏野菜と一緒に漬け込めば、彩りもよくて栄養バランスもバッチリです。
冷製茶漬け|焼き魚をアレンジしてひんやり一品に
前日の焼き魚がちょっと残ってしまったら、冷製茶漬けがおすすめです。
ごはんの上に細かくほぐした魚をのせて、冷やした「だし」や「冷茶」をかけるだけ。
刻んだ大葉やみょうが、すりごまなどを添えると、風味がぐっと広がります。
「暑くて何も食べたくない」という日にも、スルッと食べられる暑い日の救世主です。
フライ・天ぷら|揚げたてを塩でさっぱりと
夏の旬魚、キスやキビナゴなどは天ぷらやフライにしても美味しさ満点。
衣はサクッ、中はふわっと軽く仕上がるので、暑い日でも意外とペロッと食べられます。
天ぷらなら、冷やしそばや冷やしうどんにのせるのGOOD!
また、ポン酢や塩で食べると、重たくならずに夏らしくさっぱりいただけますよ。
グリルで簡単!レモンやハーブを添えて夏っぽく
スズキやシマアジなどの白身魚は、塩とオリーブオイルだけでグリルしても絶品。
仕上げにレモンを絞ったり、タイムやローズマリーなどのハーブを添えたりだけで、ぐっと夏らしい一皿になります。
見た目も香りも爽やかなので、食欲をそっと後押ししてくれるはずです。
まとめ|今年の夏は「旬の魚」で食卓に小さな幸せを
夏は暑さで食欲が落ちたり、献立に悩むこともありますよね。
そんな時こそ、今が旬の魚を食卓に取り入れてみてください。
特別なことをしなくても、旬の魚は焼くだけ・刺身にするだけでも驚くほど美味しく、食卓に季節の豊かさを運んでくれます。
「今日はどんな魚にしようかな?」と考える時間が、ちょっとした楽しみに変わるかもしれません。
今年の夏は、旬の魚で小さな幸せを感じてみませんか?